インドには太陽神を祭る特別な2つの寺院しかありません。その中でも、南インドのタミルナードゥ州にあるスルヤナル寺院は、驚くべき歴史と深い霊的意味を秘めた聖地なのです。
この寺院は、カーヴェリー川沿いにあり、クンバコナムから約15km東に位置しています。チョーラ王朝のクロットゥンガ1世によって建立されたこの寺院には、単なる建築物以上の重要な意味が込められています。
寺院の最大の特徴は、9つの惑星(ナヴァグラハ)にそれぞれ独自の祀られた聖堂が存在することです。中央には太陽神スリ・スーリヤナーラーヤナスワーミーが、妻のウシャー・デーヴィーとプラティユシャー・デーヴィーと共に横たわっているのが見られます。
インドには数多くの神殿があり、その中でも太陽神を祀る寺院は非常に珍しいのをご存知でしょうか。実はインド全土で太陽神の寺院はわずか2つしか存在しません。その中の1つが、本記事で紹介する南インドのスルヤナル寺院なのです。
この寺院には驚くべき特徴が隠されており、その秘密を紐解いていきたいと思います。太陽崇拝の歴史が古代から続くインドで、なぜここのスルヤナル寺院が特別なのか。その謎に迫りましょう。

スルヤナル寺院が特別な理由の一つは、その独特な配置と設計にあります。この寺院は、インドの伝統的なヴァーストゥ・シャーストラ(インド建築学)の原則に基づいて建設されており、太陽の動きに合わせた精巧な構造を持っています。寺院の正門は、太陽が昇る方向、すなわち東向きに設計されており、特定の時期には朝日が寺院の本尊に直接降り注ぐようになっています。特に毎年1月中旬から2月上旬にかけてのマカラ・サンクランティの時期には、多くの巡礼者がこの神聖な現象を目の当たりにしようと訪れます。
また、スルヤナル寺院は、ナヴァグラハ(九惑星)の影響を鎮めるための特別な儀式が行われる場所としても知られています。ナヴァグラハとは、インド占星術において宇宙のエネルギーを支配する9つの惑星(太陽、月、火星、水星、木星、金星、土星、ラーフ、ケートゥ)のことを指します。この寺院では、各惑星に対応する9つの小さな聖堂が配置されており、参拝者はそれぞれの惑星の影響を鎮めるために特定の祈りや供物を捧げます。
特に、太陽神スーリヤへの信仰が厚い人々は、日曜日に寺院を訪れ、特別なプージャ(礼拝)を行います。スーリヤ神は健康、繁栄、知恵をもたらす神とされており、特に目の病気や皮膚病に悩む人々がこの寺院に訪れて治癒を祈願することが多いとされています。太陽の持つ浄化の力を信じ、聖なる水で身を清めた後にスーリヤ神に祈ることで、心身ともに浄化されると信じられています。
この寺院には、毎年行われる盛大な祭り「ラター・サプタミ」があります。この祭りは、太陽神スーリヤの誕生日とされる日で、寺院周辺は華やかな装飾が施され、数千人の巡礼者が集まります。祭りのハイライトは、スーリヤ神の神像を載せた豪華な馬車が町を巡る行列です。巡礼者たちは、その馬車の後に続きながら賛歌を唱え、神への感謝を捧げます。

また、スルヤナル寺院には、数多くの神秘的な伝説が残されています。その中でも特に有名なのが、スーリヤ神の恩恵によって目が見えなかった王が視力を取り戻したという話です。伝説によると、ある王が太陽神への信仰を深め、この寺院で厳しい祈願を続けたところ、奇跡的に視力が回復したとされています。この話が広まったことで、多くの人々が目の健康や病気の治癒を求めて訪れるようになりました。
さらに、スルヤナル寺院の周辺には、他のナヴァグラハ寺院も点在しており、それらを巡礼することで人生の困難を乗り越える力を得られると信じられています。スルヤナル寺院を起点に、ナヴァグラハ巡礼を行う人々も多く、特に占星術に関心のある人々や、運命を好転させたいと願う人々が訪れます。
このように、スルヤナル寺院は単なる建築物ではなく、太陽信仰の深い歴史、神秘的な伝説、そして人々の精神的な癒しの場としての役割を持つ特別な場所なのです。もしインドを訪れる機会があれば、ぜひこの寺院を訪れ、古代から続く太陽信仰のエネルギーを体感してみてはいかがでしょうか。

コメント