2018年8月下旬、私は再び南インドのケララを訪れる機会を得ました。前回はアーユルヴェーダ・ホスピタルやクリニック施設を視察するという目的で訪れた旅でしたが、今回は少し趣を変え、夏季休暇を利用したプライベートな旅です。この旅の目的は多岐にわたり、インドの史跡や寺院を巡ること、アーユルヴェーダ・リゾート施設での滞在、そして私が長い間興味を抱いていた「アガスティアの葉」を体験することでした。
ケララ到着と友人香苗さんとの再会
ケララ州の玄関口ともいえるコーチン空港に到着したのは、深夜遅くのことでした。暗闇の中でも、南インド特有の湿気と温かな空気が身体にまとわりつきます。空港の出口を出ると、久しぶりに友人の香苗さんが出迎えてくれました。彼女とは以前の視察旅行で知り合い、それ以来連絡を取り合う仲となっています。香苗さんの笑顔とともに、私の旅は始まりました。
その晩、私は香苗さんの自宅に宿泊することにしました。彼女の自宅は、ケララ州の伝統的な建築様式を取り入れつつも、現代的な快適さを備えた素敵な家です。到着後、香苗さんは夜食として軽い南インド料理を用意してくれていました。シンプルながらもスパイスの効いた一皿は、長旅の疲れを癒してくれました。
翌朝、香苗さんの用意してくれた朝食を食べながら、今回の旅の予定について話し合いました。彼女は私の旅程を細部にわたってサポートしてくれると約束してくれ、特に「アガスティアの葉」の体験が無事に進むように手配を進めてくれるとのことでした。
コーチン市内観光とシヴァ寺院訪問
ケララ州の州都であるコーチン市内観光は、旅の初日のメインイベントとなりました。香苗さんの提案で、まずはヒンドゥー教の重要な寺院である「エルナクラム・シヴァ寺院」を訪れることにしました。この寺院は、ケララ地方で最も神聖な場所の一つとして知られています。ヒンドゥー教の伝統が色濃く残るこの地域では、寺院に入る際には特別な礼儀が求められます。
シヴァ寺院へ向かう途中、香苗さんは寺院の歴史や参拝に関する注意点を丁寧に説明してくれました。ケララ地方のヒンドゥー教寺院は特に厳格で、参拝者は決められた服装を着用する必要があります。男性はドーティー、女性はサリーという伝統的な服装が求められます。外国人である私が寺院の敷地内に入ることが許されるかどうかはわかりませんでしたが、香苗さんは「外から手を合わせるだけでも十分よ」と言い、私を励ましてくれました。
シヴァ寺院での特別な体験
車で20~30分ほど走り、エルナクラム・シヴァ寺院に到着しました。寺院の敷地は広々としており、中央にはケララ様式の伝統的な神殿が建っています。その周囲には、塔門(ゴープラム)や小さな祠が点在しており、荘厳な雰囲気を醸し出していました。
私たちは寺院の敷地内に入ることが許され、さらに運良く中央の神殿にも足を踏み入れることができました。神殿内の石畳の冷たい感触が、外の暑さで火照った体に心地よく感じられました。中央にはシヴァ神が祀られているとされる場所がありましたが、この日は扉が閉じられており、ご神体を見ることはできませんでした。
代わりに、隣の祠にはガネーシャ神が祀られており、多くの参拝者がそちらに手を合わせていました。私たちもガネーシャ神に花を捧げ、旅の安全と「アガスティアの葉」が無事に見つかるよう祈りました。この祈りの時間は、ただの観光では得られない深い感動をもたらしてくれました。
ヒンドゥー教の伝統と寺院の雰囲気
エルナクラム・シヴァ寺院での体験は、ヒンドゥー教の奥深さを感じさせるものでした。寺院の建築や装飾には、古代から受け継がれてきた宗教的なシンボルや儀式の意義が凝縮されていました。特に、寺院の塔門(ゴープラム)は色鮮やかな彫刻が施され、ガネーシャ神をはじめとするヒンドゥー教の神々が描かれていました。
寺院での祈りの後、私たちは近くの南インド料理店で昼食をとりました。ケララの伝統的な料理は、バナナの葉に盛られた多彩なカレーとライスが特徴で、スパイスの豊かな香りが食欲をそそります。この食事を通じて、ケララの文化により深く触れることができました。
初日の締めくくりと次への期待
エルナクラム・シヴァ寺院での特別な体験を終えた後、私たちはコーチン市内を散策しました。香苗さんの案内でフォートコーチンという歴史的な地区を訪れ、そこに残るオランダやポルトガルの建築様式を楽しみました。歴史の息づく街並みと、寺院での神聖な時間。この二つが調和し、私の心を大きく揺さぶりました。
夕方にはコーチン空港へ向かい、国内線でチェンナイへ移動しました。飛行機の窓から見るケララの夕景は、まるでこの土地の豊かな自然と文化を象徴するかのようでした。
こうして、ケララでの初日は終わりを迎えました。この日の体験は、これから始まる「アガスティアの葉」を巡る旅に向けての重要な準備であり、南インドの深い魅力を存分に味わう時間でもありました。次の日、チェンナイでの新たな冒険に胸を膨らませながら、私はその夜をホテルで静かに過ごしました。
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